Sunday, April 10, 2016

フランク・スウェイン 『ゾンビの科学』

:よみがえりとマインドコントロールの探究
Swain, F., & Nishida, M. (2015). Zonbi no kagaku: Yomigaeri to maindo kontorōru no tankyū. Tōkyō: Intāshifuto.

(How to Make a Zombie: The Real Life (and Death) Science of Reanimation and Mind Control)


すべては脳のなかに

人の右の扁桃体を、電極を用いて人工的に刺激してみると、その人はだんだんに恐怖や怒りを感じはじめ、やがてその気持ちは隠しておけなくなるほど大きく膨らむ。感情のダムが決壊すると、ふつうは外の刺激に攻撃の矛先を向ける。・・・電極をはずしたあとにも感情は残り、多くの場合は驚くほど長く続く。(p.116)

隠れ家に踏み込む

ドイツの神経学者エドワルド・ヒッツィが・・・イヌの頭皮を切り裂いて脳を見えるようにしてから、細い金属針で灰白質のさまざまな領域を刺激し、筋肉の収縮をおこさせていた。(p.p.118-119)

[人間でも脳の]随意運動野を刺激すれば脚が急にピクンとのびるかもしれないが、ジョヴァンニ・アルディーニとアンドリュー・ユーアが一世紀も前にやって見せたように、脚に沿って走る神経に電流を流しても同じことが起きる。(p.121)

一九九八年にはノースカロライナ州在住のスチュワート・メロイ医師が・・・電気脳刺激が性欲を刺激するという強力な効果を発見することになる。[慢性的な腰痛を抱える女性の]患者は背骨に電極を埋め込む「仙骨神経刺激療法」と呼ばれる治療を選んでいた。手術中にメロイ医師が電極の位置を試していると、女性が妙なあえぎ声を出しはじめ、「それをどんなふうにやるのか、私の夫に教えてちょうだい」と大声で叫んだという。

昆虫偵察機

[科学者デルガドがコントロールする]ウシの脳には「スティモシーバ」が埋め込まれていた。無線につながった神経のペースメーカーの一種で、デルガドがイェール大学の生理学部にある自分の研究室で設計したものだ。この装置を使って電気脳刺激(EBS)を与えることで、動物を命令に従って踊らせたり鳴かせたりすることができた。

[てんかんの治療を受けていた三六歳の女性の手術後、]療法士が埋め込まれた電極に順番に電流を流しながら話を聞いていた。右側頭葉を刺激したときに、この女性は体の片側でヒリヒリするような快感があると話した。パルスを繰り返すうちに快感はさらに強まって、患者はおしゃべりになり、異性の気を惹くようなそぶりを見せるようになった。あるところまでいくと欲望があまりにも刺激されたせいか、療法士に結婚してほしいと迫った。(p.p.134-135)

もし誰かにスティモシーバを埋め込んだとして、その人物は装置に送られる命令に抵抗できるのだろうか?・・・デルガドの患者のひとりは、手で握りこぶしを作らせようとする刺激を運動皮質に送られ、それに抵抗するよう指示された。何回やってみてもだめだとわかると、患者はため息まじりにこう言った。「先生、先生の電気のほうが、私の意志より強いのだと思います。」

 [だが、命令を直接脳に送るよりも]脳の一部を刺激して感情を呼び起こす[ことで行動を起こさせる]ほうがずっと簡単だ―人はその感情にしたがって行動するだろうし、常にその行動を自発的なものと考える。たとえばデガルドが、ひとりの患者にある種の不安を抱かせるよう何度も仕向け、その患者が自分のまわりを調べるよう誘導してみた。運動皮質に電極を埋め込まれた場合とは異なり、この患者はいつも自分から調べたくなって、自分自身の気持ちに従っただけだと言った。 (p.139)

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