Saturday, October 14, 2017

池谷裕二『単純な脳、複雑な「私」』


 人の海馬[Hippocampus]に細い電極を刺して、ニューロンの活動を記録してみてわかったことなんだけど...
 たとえば、君が何か思い出すとしようか。何でもいい。たとえば好きな映画のこととかね。すると、それを思い出して、意識にのぼるよりも前に、その映画に対応する海馬のニューロンが活動を始めているんだ。
 ニューロンが活動すると、その1.5秒後に、そのニューロンに対応した内容を思い出すんだよね。つまり海馬の活動を見ていれば、君が何を想起するのか、その内容を、君よりも先に知ることができるってことだ。(p.265)





ありもしない色が見えてくる

…外界にピンク色が存在しているかどうか、あるいは、ピンク色が光波として網膜に届いているかどうかは、あまり重要なことではなくて、脳の中のピンク色担当のニューロンが活動するかどうかが、「存在」のあり方、存在するかどうかを決めていることになります。

脳を記録すれば心は読める

…みなさんのピンク色ニューロンの活動を記録しておけば、そのニューロンが活動をやめたら、「あ、今、ピンク色は見えてないでしょう」と言い当てることができるわけですよね。こんなふうに脳を覗かれると、すべてはバレバレ、私たちの心が読まれてしまう可能性があります。
 これを応用すると、嘘発見器ができ…私が知る限り最も成功しているのは、このマーク・ジョージらが率いる研究グループでしょうか。(George MS., et al. Detecting deception using functional magnetic resonance imaging. Biol Psychiatry, 2005)


 ちなみに、インドでは世界に先がけて、MRIの嘘発見画像が法廷で証拠として使われています。
(p.p.33-35)

 もうひとつ、おもしろい話をしましょう。(Coan JA., et al. Lending a Hand: social regulation of the neural response to threat. Psychol Sci. 2006)…"Lending a Hand"つまり「手を貸す」というタイトルがついています。…ここではボランティアの既婚女性に研究室に集まってもらって、脳の活動を調べています。
 何をするかというと、手に強い電気刺激を与えるんです。痛いんですよ、ビリビリと。…そこで、次に何をやったかというと…旦那さんに脇でもう一方の手を握ってもらったんですよ。…すると驚くべきことに、恐怖の反応が減るんですよ。島皮質といって嫌悪感を感じる脳部位の活動が、夫が横で手を握っていると減ります。…おもしろいことに、見知らぬ人が手を握った場合は、何の効果もないんです。

脳を覗かれる

…奥さんの信頼度が高いほど、鎮痛効果も高いということです。だから旦那としては「オレたちは円満だろう」と自信満々で手を握ったらまったく[島皮質の]活動が減らなかったなんてこともあるわけです。…裏を返すと、脳さえ見れば、妻が夫のことをどれだけ愛しているかを測定できてしまうということですね。


…僕はこれを「脳ハラスメント」と呼んでいるのですが、言ってみれば、脳の反応はプライベートなものです。個人情報だから本来は知られたくないこともたくさんある。…考えている内容がバレてしまったら、すごく恥ずかしいとか、人間関係の上で都合が悪いとか、いろいろと支障があるでしょう。どうですか。やっぱり人って、素裸を見られるよりも、脳内を覗かれる方が恥ずかしいと、私は思うのですが。
 現代科学ではともすると、そういった心の動きまで手に取るようにわかってしまう可能性すらあるわけです。(Miyazaki Y, et al. Visual image reconstruction from human brain activity using a combination of multiscale local image decoders.,etc)

 だから今、神経科学では、研究における倫理性をしっかり確立していこう、やっていいことと悪いことの基準を確立しようという方針があって、最近では「神経倫理学」という新しい学問も生まれています。(Illes J., et al. Neuroethics: a modern context for ethics in neuroscience. Trends Neurosci, 2006.,etc)
(p.p.37-39)


Sunday, October 8, 2017

池谷裕二『脳には妙なクセがある』

ikegaya, . (2013). Nō niwa myōna kuse ga aru. Tōkyō: Fusōsha.

どの脳部位が何を担当しているかを示す脳範囲

…脳を直接電気刺激して調べた実験があります。…ある場所を刺激すると耳に何かが触れた感じがしたり、また別の場所を刺激すると視野に光が見えたり、昔の記憶が蘇ったりします。こんな実験を繰り返すと、どの脳部位がなにを担当しているかという「脳地図」が描けます。

(Sirigu, A. et al. Movement intention after parietal cortex stimulation in humans. 2009)


「自己認識された自分」と「他者が見た自分」

[脳を直接電気刺激する実験で]頭頂葉[parietal lobe]のある場所を刺激したところ、手や腕や唇など、身体の特定のパーツを動かしたくなりました。動かしたいという「意志」が電気刺激で生まれるわけです。 ただし実際には動かしてないことに注意してください。欲求のみが生まれるのです。つまり頭頂葉は「意志の宿る脳回路」です。

…[「前運動野」という部位]を刺激すると、刺激場所に応じた身体のパーツが実際に動きます。…ところが実際に動いているにもかかわらず、本人には「動いた」という自覚がありません。
(p.p.267-270)


カリフォルニア大学のアディン博士らが行った実験によれば、TMSという装置[*狙った脳回路を短期間だけ不活性化させる磁気刺激装置]を使って右側の「頭頂葉」の下部を麻痺させると、写真に映った[自分の]顔が自分なのか他人なのか区別できなくなってしまうようです。頭頂葉は時空認識に大切な脳部位とされています。この実験から「自分」という存在は、脳内の時空の中で創作されていることが想像されます。
(Uddin, LQ. et al, rTMS to the right inferior parietal lobule disrupts self-other discrimination. 2006)

(p.298)

Picture borrowed from Center For Brain

Sunday, October 1, 2017

北海道大学入試 "Government Spying on Its People"

北海道大学 平成29年度入試 英語 第4問

『政府によるプライバシー窃盗と社会統制への危惧』

Excerpts from the entrance exam of Hokkaido University, 2017

Chris: ...I've heard that the police and intelligence services can now follow everything we do. They can read our email, look at our posts on social media, track us from our mobile phone signals, even check our bank accounts. I don't want people nosing into my affairs.
      [...]
       Remember that whistleblower in America a couple of years ago? He said that the security services there track millions of personal messages on email and social media. I don't want the authorities to know about my private life! Look, there's probably someone watching us right now on that security camera over there.
      [...]
       Somebody is watching us almost every second. There's no privacy and I can't relax anymore. OK, so they can catch serious criminals but I'm worried that they will be used for social control, like identifying people at political rallies or kids hanging around in parks having fun.  

      [...]
       Governments everywhere are using the power of computers to control us. They are imposing new measures like individual identification numbers that can be linked to personal information -- bank accounts, health records, things like that -- so they can know exactly what we are up to, how much we spend, what we spend it on, how often we travel abroad and where we go, and so on. And at the same time the government makes new laws to keep its own information secret and tries to control media. It's very disturbing. Maybe one day we'll all have individual microchips inserted under our skin!
      [...]
       If we don't stand up to this now we will lose our freedoms before we know it.

『坂本真樹先生が教える人工知能がほぼほぼわかる本』

Sakamoto, M. (2017). Sakamoto maki sensei ga oshieru jinko chino ga hobohobo wakaru hon. Omusha.

人工知能の嗅覚とは?

 [人工知能の開発には]匂いの情報も共有できるようになることが必要かもしれませんが…識別した匂いをインターネットで遠隔地へ送り、再現するというところまで研究が進んでいます。嗅覚ディスプレイと呼ばれるもので、実物がなくても匂いを再現することができます。(p.71)

匂いはこれからどうなるのか?

 嗅覚に関連する情報における人工知能の研究は遅れていましたが、匂いに関係する産業は多いため、開発が加速すると思われます。
・・・匂いには[脳に]400弱の受容体があるため、組み合わせが多く、目標とする匂いを作る作業は困難とされています。
・・・しかし、人工知能で匂い成分の組み合わせの計算と高速な再現ができるようになり、それをバーチャルリアリティ(人工現実感)で作り出すことにより、近い将来より身近になるでしょう。
 

最近では、「匂い」が体感できる映画館もあるようですね。将来は、家庭のパソコン、ゲーム機などからも匂いが体験できるかもしれません...!? (p.72)


教師なし学習とは?

 たとえば企業がお客さんをタイプ別に分類する際に、教師なし学習[コンピュータが自分で特徴量を抽出して学習]が利用されています。・・・お客様アンケートやインターネットの通販サイトの購買履歴などたくさんの情報があっても、それ自体から人間がお客さんについての何らかの傾向を把握しようとしても大変です。
 そこで教師なし学習を駆使して、コンピュータにお客さんをタイプ別に分類させます。そうすることでそれぞれのタイプのお客さんごとに適した商品を紹介する「レコメンド」というサービスが展開できたりします。(p.91)


ヘッブの法則

 ヘッブの法則とは、「シナプスの前と後で同時に神経細胞が興奮するとき、そのシナプスの結合は強化される」という法則です。
・・・たとえば「梅干し」を食べると、赤い色に興奮する細胞と、丸い形に興奮する細胞と、酸っぱい味に興奮する細胞が、同時に興奮します。
・・・このとき、同時に興奮した細胞同士のつながりは強化されますが、興奮した細胞とそうでない細胞とのつながりは弱くなります。(p.130)




シャンカール・ヴェダンタム 『隠れた脳』

Vedantam, S., & Watarai, K. (2011). Kakureta nō ("The Hidden Brain") : Konomi dōtoku shijō shūdan o ayatsuru muishiki no kagaku. Tōkyō: Intāshifuto.

小さな集団の力学

 二〇一一年九月一一日の朝、ニューヨーク市警やニューヨーク消防局の制服を着たふつうの男女が、落ち着いてツインタワーの中へ乗り込んだ行動(そして命を危険にさらしたこと)も、小さなグループの集団心理で説明できる。 …そのような行動は愛国心の名で語られるが、人間は国王や神や国のためになど命をかけないと、戦闘司令官たちはよく知っている。たしかに兵士たちはそう“言う”かもしれないが、実際のところ、彼らが命を投げ出すのは、塹壕の中で隣にいる仲間たちのためだ。

[…]

 歴史上どの時代でも、自爆攻撃が行われるときには、自分の命を投げ出そうという男女の数は常に需要を上回っていることも、小集団が個人に与える影響で説明できる。志願者の多くは標準以下どころか、優秀な部類に入る人々だ。
…自爆テロリストたちは、入るのがきわめて難しい、排他的なクラブに所属している。その排他性こそが大きな魅力なのだ。人をトンネル(ふつうの人を自爆攻撃の世界に集める)第一歩は、限られた人びとしか入れないと思わせることだ。それが人々の自尊心をくすぐる条件である。(p.p.188-198)


Friday, August 4, 2017

Gadit, "Terrorism and Mental Health"

Terrorism and Mental Health: The issue of psychological fragility

Amin A. Muhammad Gadit  ( Discipline of Psychiatry, Memorial University of Newfoundland, St. John's, NL A1B 3V6 Canada. )

...There are reports of a new and dreadful invention of weapons of violence that are called Bio-electromagnetic Weapons. According to the description by an Institute of Science in Society, these weapons operate at the speed of light, can kill, torture and enslave without making physical appearance. It further adds that voices and visions, daydreams and nightmares are the most astonishing manifestations of this weapon system, it is also capable of crippling the human subject by limiting his/her normal range of movement, causing acute pain the equivalent of major organ failure or even death and interferes with normal functions of human senses. It can cause difficulty with breathing and induce seizures besides damage to the tissues and organs.

Through this form of terrorism, it is possible to persuade subjects that their mind is being read; their intellectual property is being plundered and can even motivate suicide or murder.
Pulsed Energy Projectiles (PEPs) are another form of weaponry that is used to paralyze a victim with pain. According to Peter Philips, a scientist from USA, circumstances may soon arrive in which anti-war or human right protestors suddenly feel a burning sensation akin to touching a hot skillet over their entire body. Simultaneously they may hear terrifying nauseating screaming, which while not produced externally, fills their brains with overwhelming disruption. This new invention is dreadful addition to the armamentarium of weapons of abuse and torture. Manifestations of the effects of these occult weapons can mimic mental ill health and add further to the misery of the victims.

The potential threat from use of biological warfare agents is more devastating as they are not detectable before the attack and can lead the possible victims to a state of constant vigilance and anxiety.

Full Text: http://jpma.org.pk/full_article_text.php?article_id=1837